2022年5月1日 蓼沼康之

「地方は東京に比べてITが遅れている」

という記事を見たり、言われたときに地方に在住・在勤の方はどう思われるでしょうか?

私は国内で比較をするのではなく、どうしたら日本がもっと良くなるかを考え、 “地方は東京に比べてITが遅れているから○○をした方が良い”という言葉があって、はじめてその記事や発言は見る・聞く価値があると考えています。

また、ITが遅れているという表現は広義すぎる=抽象的であると私は捉えています。

今日はそのような観点からTFLの地域DXの記事をお送りします。

IT競争力 国際ランキングにおいて、日本は上位にいません。

スイスの国際経営開発研究所(IMD)の世界主要各国のデジタル競争力2021年版では、日本は28位。アジア圏でも10位圏内のシンガポールや韓国、中国から引き離されています。

私も2019年に深センを訪問した際に、日本とのIT格差をまざまざと見せつけられたものです。

先ずはこの状況を現実として受け入れ、地方のITの遅れを指摘するより、どうしたら日本のITがもっと発展するかを私たちは真剣に考えています。

しかし、ITという言葉は広義すぎると私たちは感じています。

まず、日本人ひとりひとりのプログラマー・エンジニアのスキルが劣っているとは思いません。

プロダクトそのもののクオリティが劣っていることもないと思います。

むしろ、クオリティや細部への拘りという点では日本の技術力はトップクラスだと私は思います。

深セン訪問で感じたこと

私が2019年に深センに訪問した際に、深センで無人コンビニなどに実装し運用されている深センで造られた顔認証システムの精度は当時70%前後だったと記憶しています。一方日本のメーカーの顔認証システムは90%台後半だと現地のITの企業の方が仰っていました。

当時日本での顔認証システムの利用は、せいぜい企業内の入口のロックを解除させる用途などがメインで、まだまだ多くの活躍の場が無い状況でした。

このことから、IT競争力・ITの遅れとは技術力の遅れではなく、ジャンプイン・チャレンジの遅れであると私は当時感じましたし、深セン現地在住の日本人の方も同じことを仰っていました。

このジャンプイン・チャレンジの遅れは、法律・利権・文化など一筋縄ではいかない壁がたくさんあるのでしょう。

法律や利権について、ここで触れることはしませんが、文化については今後もスピードの遅れを生み、差が広がっていく大きな要因になるかもしれません。

仮に法改正をしたり、利権を取っ払ったところで、最終的には人の感情により、進むも停滞するも決まってしまうのではないかと私は感じています。だからこそ文化、考え方、感情をドラスティックに変えていく何かが最も重要ではないかと私たちは考えています。

性悪説より性善説

失敗を恐れること、リスクばかりを考えるのではなく、挑戦していこう、ある程度の失敗は許容して受け入れていこうという文化。リリース前からバグを全て潰すのではなく、リリースしてから走りながら考え、修正しながら良いものを作っていこうという文化。

結果的にどちらのほうが、短い期間で良いプロダクトを作ることができるか。

これはITだけではなく、組織の成長において重要なキーの一つだと私は捉えています。

日本はひとりひとりの技術力の高さや、勤勉でまじめな性格・国民性を考えたときに、優秀な先導者・仕組み・きっかけさえあれば、ブレイクスルーとまではいかなくても、今までよりは早い速度でIT成長が期待できるのではないでしょうか。

IT人材の不足?

日本のITの遅れの一つにIT人材の不足という記事もよく見かけますが、IT人材という定義も広義すぎると私たちは感じています。

どの分野のIT人材が不足しているのかという議論は価値が高いと思っています。

圧倒的に上流工程のIT人材不足ではないかと私たちは感じています。

顧客の業務を理解し、経営課題や業務課題を解決するためのシステムを企画し、要件定義するポジションの方です。開発の実務ベースで言えば、PM、PMOのポジションも同じく不足している企業が多いように感じます。

コンサルの領域で見たときは、ITリテラシー×ビジネス的視点×コンサルタントとしての力量をかけ合わせた人材は稀有であると思います。また、更にクライアントの業界をよく知るという掛け算も組み合わせると、極めて希少になります。

その希少な人材でさえも、スキルと力量を全面に出して、とにかく効率化と利便性だけを追求していくだけでは、地域DXは前に進まないと私たちは実感しています。

もとい、地域DXではなく東京のど真ん中にある企業のDXでさえ進まない現状をまざまざと見ています。

地域DXを推進させるには、更にその地域の歴史・文化・しきたり・良さ・人間関係などをよく知った上で、地域の方との関係性構築が最も重要なキーと言っても過言ではないかもしれません。

本当に大事なことの地域DXのキーがあ私たちには、まだぼんやりですが見え始めています。

今後セミナーやイベントを通じて、共に探究していきませんか?

その探究の先にある、“きっかけ”が見つかった時、東京のど真ん中だろうが、過疎化が進んでいる地方だろうが、劇的なDXブレイクスルーが、どこかで起き始めると確信しています。

日本人個々の技術力は高いことに誇りと自信を持った上で、現状の世界での位置や足りないこと、弱みを真摯に受け止め、本当に大切なことは何かを共に探究してまいりましょう。

深センの歴史(経済特区・IT特区)日本にも国家戦略特区

深センは中国が、1980年に経済特区・IT特区として指定する前までは、小さな漁村でしたが、30年で、人口は30万人から1200万人に急成長を遂げました。

日本にも国家戦略特区があります。

総合特区は、実現可能性の高い先駆的取組を行う区域に、規制・制度の緩和に加え、税制・財政・金融上の支援といった総合的な支援を行うものです。 また、国家戦略特区と構造改革特区との一体的な運用を図る観点から、同時に提案募集を行っております(国家戦略特区 | 首相官邸ホームページより引用

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記事の執筆者

経営管理部 部長 兼 DXサポート室 室長

蓼沼 康之(たでぬま やすゆき)

1981年生まれ

不動産会社でIT推進責任者として、業界でいち早く顧客情報のクラウド管理やデータ分析を導入。貿易商社にて新規事業をDXの活用で成功させる。そのビッグデータ系のITコンサル企業で金融機関や大手不動産会社の支援に従事し、不動産系ビッグデータのクラウドサービスを企画しプロジェクトマネージャーとしてローンチ。

現在はDXコンサルタントとして、様々な企業のDX支援を担当。

地方創生メイン担当領域